HOME>E217系の概要

 E217系とは

 E217系電車は横須賀・総武快速線の普通電車で使用されている車両である。1994年~1999年までの約5年間に745両(11両編成(基本編成)51本、4両編成(付属編成)46本)が製造さ れ、全ての車両が横須賀・総武快速系統で使用されている。

 4扉を基本とし、基本編成の千葉寄り3両とグリーン車2両を除いてロングシート車両となっている。また基本編成の3両も ボックス席とロングシートを合わせたセミクロスを採用し、グリーン車もすべての車両が2階建て構造をとっており、通勤への対応に特化した車両とも言える。

 このページでは横須賀線の主要車両であるE217系について扱う。インターネットその他で既に扱われているテーマであるため、ここでは筆者独自の視点か らの記述をメインとする。

*以下の項目は別ページに掲載*

製造時期による違い

アコモデーション

 誕生までの流れ

 首都圏の近郊路線は国鉄時代に製造された車両が大半を占めていた。通勤路線には新型車両の209系が投入されており、近郊路線にも新型車両を投入するとい うのは自然な流れであった。しかし209系をそのまま近郊路線に投入することはできない。実際、209系には不要であったトイレ設備、グリーン車さらには踏切事故対策が必要となることは明らかで、新型車両は209系をベースに開発されることとなった。

 新型車両の形式名はE217系となっ た。近郊型車両が211系、213系、215系と命名されていることからすると、この命名は自然な流れである。もちろん、209系に新たな番台を作ること も考えられたではあろうが、新型車両はあくまでも近郊型車両であることを意識したのだと思われる。のちのE231系では通勤・近郊の隔てをなくしている が、この時点ではまだ近郊型車両は別であるという意識がJR東日本の中にはあったのだと思われる(20*系は通勤型車両、21*系は近郊型車両に用いら れる) 。

 209系と同様にすべての車両をロングシートとすれば通勤ラッシュの軽減に繋がる。実際にロングシート車は乗り降りにかかる時間 が少なくて済む。一方で、近郊路線は通勤以外にも旅行で使われる路線である。そのため多くの人を運ぶことだけを考える通勤型車両と違い、旅行で使っても差 し支えのない車両にする必要がある。実際、それまでの近郊型車両は一部の少数形式を除いてすべての車両にボックス席が設置されていた。この二つの条件を満 たすめ、一部の車両にのみボックス席を設置することとなった。設置する車両は比較的混雑の少ない先頭車両付近とした。基本編成で考えればグリーン車を挟 んで東京寄りに普通車が6両あり、そのうちの3両に設置すれば良いということとなる。久里浜寄りは3両しかないため、ある程度混雑すると考えたのと思われ る。なぜ6両のうちの3両なのかは分からないが、半分でキリがよく編成に3両あれば十分だと思ったのではないかと推測される。一方で行楽で使う時は昼間、 つまり11両編成で運転する時間という発想からなのか付属編成には設置されなかった。

  ドア数は4ドアで統一された。3ドアに比べ4ドアは乗降時間が短く済む。また4ドアとしてもボックス席の設置には問題はなく、ここら辺はスムーズに決定されたものと思われる。

  近郊路線では編成同士の連結がある。新型車両の投入期間が長いほど旧型車両との共存は避けられず、異形式同士の連結が想定された。実際、209系では 780両の投入で済んだが、近郊路線すべてに投入するとなると、必要な車両の数は1000両をゆうに超える。そのため、旧型車両と連結運転ができることが 求められた。

 新型車両の投入路線として横須賀線が選ばれた。なぜ横須賀線が選ばれたのか。一つには横須賀線で使用されている車両が統一されていたからであろう。東海道・高崎・宇都宮にはJR化前後に3ドアの211系が部分的にではあるが投入されており、仮に旧型車両の置き換えが完了したとしてもドア数が車両によって異なる。(もちろん投入間もない211系を置き換えることはあり得ない)そのまま使い続けると長期間にわたって運用上面倒なことになる。二つ目に1991年に開業した成田空港駅である。旧型車両を空港乗り入れ車両として使用していては利便性が悪く、またサービス品質も低下してしまう。そのために直通する横須賀線に新型車両の投入が必要とされた。

   以上の経緯からか横須賀線へ量産先行車が投入された。しかし、旧型車両との連結運転を行ってみたものの良好な結果は得られない。しかしE217系の横須賀 線への短期集中投入が決まったため、連結運転の必要はなくなった。短期集中投入に決まった理由は上述のほか、JR東日本の財務状況の問題もあったと考えら れる。なるべく早い上場を求められた結果、新型車両を現時点で大量に投入することは大きな支出となると判断したのだろう。 その後、E231系の前身となる209系950番台の登場により、他近郊線区への新型車両はE217系ではなくE231系の投入となった。

 更新工事による延命措置

 209 系と同様に十数年を寿命として設計されており、新型車両による置き換えか走行機器の更新のどちらかが必要となってきた。209系は前者の立場をとったが、 E217系に対しては走行機器の更新による延命措置が取られた。延命措置では、走行機器の更新のほか、車体の帯をこれまでよりも明るい色にすることやス カートを強化型のものに交換するといったこともなされた。2007年から編成ごとに延命措置を行い、2012年までにすべての編成に行われた。なお、転落幌に対しては帯の更新が行われていないため、ほとんどの編成で現在でも旧色の帯を見ることができる。

  延命措置という対応を取った理由は巨額の投資の抑制と今後のノウハウを蓄積するためだと考えられる。上野東京ラインや北陸新幹線の開業のための費用が必要であったため、新型車両にする必要性のない横須賀線に対しては安価で済む延命措置を選んだのであろう(209系の場合は将来的なホームドアの設置などが考慮されている)。また数年後には大量投入したE231系の更新時期が迫っており、E217系で基本的なノウハウを習得することで後の更新工事を円滑に進め る目的もあったと思われる。

 置き換え

 延命措置をしたとは言え、大部分はそのままであることから、更新工事を行った数年後には既に車両故障が発生していた。こうした経緯から鉄道ファンの間では置き換えの時期・車両についての噂がたっていた。

 2018年9月4日、定例記者会見において2020年度より横須賀線へのE235系投入が発表された。交通新聞によれば現時点での転用計画はなく、全車両が廃車の予定となっ ている。しかし京浜東北線の209系も当初は転用計画がないとされながらも転用されたこと、秋田総合車両センター内部にてE217系転用改造の文字があったことを踏まえると、真相は不明である。

 年表

1994年 8月 大船運輸区へ1次車を投入
1994年 9月~10月 113系との併結運転試験を実施
1994年12月 逗子~成田空港の限定運用で営業運転を開始
1995年11月 2次車の投入を開始
1995年12月 2次車の営業運転を開始、分割運用が加わり範囲が久里浜~上総一ノ宮に拡大
1996年10月 横浜支社発足、所属が「東フナ」から「横フナ」へ
1996年11月 3次車の投入を開始
時期不明   当時のF-02、F-52編成に対して量産化改造を実施
1997年11月 5次車の幕張電車区への投入を開始、基本1号車と増結1号車の組替を開始
1997年12月 4次車の投入を開始(4次車については組替なし)
1998年 4月 6次車の投入を開始
1999年 1月 7次車の投入を開始
1999年 4月 8次車の投入を開始、前述の組替が完了する
1999年10月 最高速度を120km/hに引き上げ
1999年12月 113系の置換完了、E217系の製造を終了
2000年 7月 大船電車区の統合により所属が「横フナ」から「横クラ」へ
2001年12月 湘南新宿ラインの運用を開始、運用範囲は久里浜~新宿
2004年10月 湘南新宿ラインから撤退、グリーン車へのSuicaシステム取付を開始
2006年 3月 F-01~03、51~53が国府津車両センターへ転属、東海道線の運用を開始
時期不明   幕張車両センターの編成が鎌倉車両センターへ転属、側面行先表示器のLED化を開始
2008年 1月 F-02、F-52が鎌倉車両センターへ転属、機器更新工事を開始
2008年12月 自動放送を開始するも数日で使用停止
2009年 2月 強化型スカートへの交換を開始
2009年夏頃 自動放送を再開
2010年春頃 行先表示器のLEDかを完了
2010年 3月 F-02、52が鎌倉車両センターへ転属
2012年 7月 機器更新工事が完了
2012年 3月 Y-2、102が国府津車両センターへ転属
2014年 3月 F-02、03、52、53が鎌倉車両センターへ転属し東海道線の運用から撤退
時期不明  自動放送にナンバリングを追加、ドアコックシールを側面に貼付
2018年 3月 Y-50に線路モニタリング装置を取付
2018年 9月 E235系による置換が発表される
2019年 9月 車内監視カメラの設置工事を開始
2020年12月 E235系の営業運転開始に伴い一部編成が運用を離脱
2021年1月 Y-44編成が配給輸送されE217系初の廃車が発生

※鉄道ジャーナル2018年8月号を一部参照